ちかくに思った

台湾メシ食いたい。屏東メシ食いたい。とにかくなんでもいいから食わせろ!

 すきっぱらなのに山登りをしてしまった引きかえに僕らが支払った代償は、とにかくもう死にそうなくらいの腹の減りぐあいだった。リブヲの運転する車のなかは、とうに昼をすぎた15時をまわっていた。

 「屏東觀光夜市にいけばメシが食える。まってろ」

 リブヲは高雄人ではあるけれども、同じ台湾南部にある屏東の地元民でもないので支付寶轉帳、慣れない屏東の街の道路のつくりの方に、ひそかに手こずっている様子であった。

 屏東觀光夜市はさすが観光と書いてあるだけあって、ちかくに思ったとおり商業的でがっつりひろめの駐車場が併設されていた。

 夜市、とはいったものの、僕たちはまだまだ午後のまんなかくらいの時間に夜市ストリートを歩いて、メシが食えそうなところを物色した。そのなか、カウンターの奥からもくもくと湯気があがっている店があったので、とりあえずその軒下にはいった。

 鷄肉飯の店のようだった。お茶碗くらいの器にメシと鶏肉の割いた肉をのせたものをふたつ注文して、さらさら食ってしまった。

 「足りないよな」
 
 「うむ、足りない」

 台湾の夜市では、はしごメシをすることが日常茶飯事だから支付寶hk充值、僕らは当然のごとく2軒目に入っていった。碗粿(ワーグイ)という食べ物で、これはこまかくすりつぶして蒸した米に、けっこう濃そうな茶色いタレをかけたものだった。そいつをスプーンでほじくったら、なかから肉がでてきたので、プリンのようなデザートを想像していた僕にとっては、その極端ぶりに驚くべきものがあった。

 「ところで、あした面接なのにこんなところで遊んでいて、大丈夫か?」

 僕はすこし気にかかっていたことをリブヲに聞いてみた。

 「あまり遅くならなければ、だいじょぶ」

 リブヲは当たり前のことを当たり前のように返した。

 「ところで君、今回の転職で何社目なんだい?」

 「9社目だな」

 「ブフォッ。おい、いくらなんでもそれはちょっと多すぎじゃないのか」

 僕はテーブルに噴きこぼした碗粿を、予備に残しておいたティッシュで拭いた。

 「少ないほうだな。10社は当たり前だな」

 日本の企業は転職の回数が多いとあまり良い印象を內痔手術もたれない、なんてことが当たり前のように言われているが、台湾の企業は、そのような考え方はまったくないみたいだった。日本でも最近になって転職回数が4、5社の人たちがぽつりぽつりと増えてきているような気もする。しかしまだまだ台湾のそれには遠くおよばない。
 
 「だからといって、9社はけっこう多いだろよ。そういうものなのか」

 「いつでも条件がいいところにいく」

 スプーンで4回、5回すくって、碗粿はなくなった。

 遅い午後のメシは、昼飯だか晩飯だか、どちらに寄せればいいのかなんだかわからない。僕らはこの後に待っているであろう晩飯をなるべく侵食したくないと考えて、メシは一旦おしまいにした。

 最後に、飲み物をテイクアウトして帰ろうと、お茶スタンドに寄った。すでに出来上がっているお茶をただコップに注ぐだけだからすぐにできるだろうと思っていたのに、気がついたらできあがるのをしっかり待っていた。簡単そうに見えてちょっと時間がかかるところが、どこか本格的だった。

 ストローでお茶を飲みながら、僕らは高雄に帰るために車の停めてある駐車場に戻った。