想像できないが

俳句の世界で「東の芭蕉・西の鬼貫」と、
まさに松尾芭蕉と並び称される江戸中期の俳人上島鬼貫(おにつら)。
彼の俳風は、作為のない自然で素朴を感じさせる作品が多いとされる。
今頃の月を詠ったのだろうか、彼の句に
「いつも見る ものとは違ふ 冬の月」という句がある。
いたってシンプルで、それでいて力強さを感じる句がある。
この時に彼が見た「月」はどのようなものであったのか想像できないが、
今夜、天空に懸かっている月こそ「いつも見るものとは違ふ月」であるようだ。

一般的にはスーパー・ブルー・ブラッドムーン(Super Blue Blood Moon)と呼ばれる月。
3つの役が合わせ重なったような月。
ポーカーで言えば、”ロイヤルストレートフラッシュ”。
麻雀で言えば、四槓子(スーカンツ)。
出会う確率はかなり低く、場合によっては150年ぶりの出現という話もある。
まず一つは、満月が通常よりも大きく見える「スーパームーン」。
通常の1,4倍だという。
そして、ひと月の間に2回の満月があることを示す「ブルームーン」。
もう一つは、月食時に月が赤銅色を帯びる「ブラッドムーン」。
この3つの役満となった奇跡のような一夜。

宮沢賢治の『注文の多い料理店』の”序”には、
彼自身が読者に語りかけるように書いた文がある。
その中に次のような一文がある。
「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、
虹や月あかりからもらってきたのです。」
今でこそ、宮沢賢治の名は知らぬ者がないほどだが、彼の生前には
彼の作品は、ほとんど知られていなかった。
それでも、ここに書かれているのは、
いつか誰かが読んでくれることを想定したような文。
「わたくしのおはなしは、虹や月あかりからもらってきたのです。」とある。
彼の周りにある森羅万象が彼に物語を語りかけたということらしい。
さあ、今夜の「違ふ 冬の月」は
どのような”お話”をもたらしているのか?というところか...